温度制御の種類と特長

 
制御の種類
長所
短所
1 ON・OFF動作 制御が簡単。オフセットの発生がない。 オーバーシュート、ハンチングがおきる。
2 比例動作 オーバーシュート ハンチングが小さい 安定制御まで時間がかかる。オフセットが発生する。
3 積分動作 オフセットを打ち消す。 比例動作より、さらに安定になるまで時間がかかる。
4 微分動作 応答を早くする。 単独では制御できない。(比例動作と組み合わせて使用する)
5 PID動作 最もよい制御特性が得られる。 PIDパラメータの設定が必要

1.ON・OFF動作

図のように、現在温度が設定値より低いときは出力をONしヒータに通電。設定値より高いとき は出力をOFFしてヒータを切る。このようにヒータ電源をON、OFFすることにより、温度を一定に保つ制御方式をON・OFF動作といいます。また、操作量が設定値を境にして0%と100%の2つの値で動作することから、2位置動作とも呼ばれます。

・調節感度

1点でON、OFFすれば出力がチャタリングしたり、ノイズの影響を受けやすくなります。そのために図のように通常、ON、OFFにはヒステリシスをもたせます。この幅を調節感度(動作 スキマ、不感帯)といいます。冷凍機のコンプレッサのON、OFFなどは、ひんぱんなON、OFFを避けなければならないので、調節感度を大きくとります。

(例)温度レンジ0〜400℃の温調器で、調節感度が0.2%の場合はD=0.8℃ですから、設定 を100℃にすると100℃でOFF、99.2℃でONします。

・ハンチングとオーバーシュート

  • ON、OFF動作におけるハンチングとオーバーシュート

ON・OFF動作では設定値に対し図のような波形の制御特性を示します。この波形をハンチングといい、ハンチング幅は次式で表すことができます。このハンチング幅が小さいほど良い制御といえます。また電源投入時の行き過ぎ量Ehをオーバーシュートと呼びます。

2.比例動作(P)

設定値に対して比例帯をもち、その中では操作量(制御出力量)が偏差に比例する動作を比例動作といいます。 現在温度が比例帯より低ければ操作量は100%、比例帯に入れば操作量は偏差に比例して徐々に小さくなり設定値と現在温度が一致(偏差なし)すると操作量は50%となります。つまり、 ON・OFF動作に比べるとハンチングの小さい滑らかな制御ができるわけです。

(例)温度レンジ0〜400℃の温調器で比例帯を5%とすると、その幅は、温度換算で20℃となります。この場合、設定値を100℃とすると90℃までは出力は完全ONで90℃をこえるとOFFの期間が生じ、100℃でONとOFFの時間が同じ(50%)となります。

・時分割比例と比例周期

リレー出力、SSR出力、および電圧出力などのオンオフパルス形の出力形態では、図のように比例帯の中で出力は一定周期でON・OFFを繰り返し、ON時間が偏差に比例します。
設定値ではON・OFFの時間比は1:1で、操作量は50%になります。このON・OFFの周期を比例周期と呼び、この動作を時分割比例または時間比例といいます。

・オフセット

比例動作では制御対象の熱容量、ヒータ容量および設定値などのアンバランスから安定状態に達しても、設定値に対して一定の誤差を生じたまま平衡します。この誤差をオフセットと呼びます。 この誤差は、比例動作のみの調節器において、リセットボリウムで修正できます。

比例帯を小さくするほどオフセットも小さくなりますが、余り小さすぎるとハンチングが発生します。

3.積分動作(I)

比例動作ではオフセットの発生があります。そこで比例動作に積分動作を組み合わせて使用することで、時間が経過するにしたがい、オフセットがなくなり制御温度と設定値が一致するようになります。

・積分時間

積分動作の強さを示す単位で、図のようにステップ状の偏差に対して積分の操作量が比例動作と 同じ操作量に達するまでの時間、したがって、積分時間が短いほど積分時間は強くなります。しかし、積分時間をあまり短くしすぎると訂正動作が強すぎてハンチングが生ずる原因となることもあります。

4.微分動作(D)

比例動作や積分動作は制御結果に対する訂正動作なのでどうしても応答が遅くなります。微分動作はその欠点を補うもので、偏差の生じる傾斜(微分係数)に比例した操作量で訂正動作をおこ なうことを微分動作といいます。すなわち、急激な外乱に対して大きな操作量を与えて、早くもとの制御状態にもどるように働く動作です。

・微分時間

微分動作の強さを示す単位で、図のようなランプ状の偏差に対し、微分の操作量が比例動作と同じ操作量に達するまでの時間。したがって、微分時間が長いほど微分動作による訂正が強いことを示します。

5.PID動作

  • 図1.PID動作の出力ステップ応答

  • 図2.PID動作の出力ランプ応答

PID動作は比例動作、積分動作、微分動作を組み合わせたもので、ムダ時間のある制御対象に最も優れた制御結果 をもたらします。それは比例動作でハンチングのない滑らかな制御をおこない、積分動作でオフセットを自動的に修正し、微分動作で外乱に対する応答を早くすることがで きるからです。 図1はステップ状偏差、図2はランプ状偏差に対するPID動作の操作量 です。

・ARW機能

PIDまたはPI系の制御における積分値は、スタート時からの大きな偏差を積分しています。そのため、温度が設定に達するころには相当大きな積分値になるので、温度が設定値に達してから過大な積分操作量が働き、オーバーシュートが発生することになります。
このために温度が比例帯の下限点に達するまでの偏差は積分から除外して点から積分を開始し、さらに比例帯内においても積分の収束予測値を積分操作量 に加えることにより、オーバーシュートを防ぐ機能を設けております。これがARW機能です。
制御結果でオーバーシュートが大きい場合は、ARWの設定値を小さくします。ただし余り小さすぎると、設定値に達するまでの時間が長くなります。

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